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休憩みたいなもんじゃないですか

お守りが呼び寄せたおじさん

「すいません、多分ここの店員さんだと思うんですけど…」

バイト中、一人のおじさんが話しかけてきた。いつもレジ横のスペースで作業しているので、客の対応は大抵自分が最初に受ける。この日も板についた営業スマイルで対応した。

「はい」

「そこに停めてある黒い原付、誰のかなと思って」

あれ…なんかやったかな、とか、普通に停めたはずだよな…、などと一瞬にして様々な不安が脳内を過る。

「私のですね」

「そうなんですか!いえ、実は僕も〇〇高出身でして、懐かしいなーと思って」

そういうわけだった。通学に使っていた頃、ナンバープレートの下に学校指定のプレートを取り付ける仕組みになっていて、未だにそれを付けて走っていたのだ。住所変更と一緒にナンバーも変わったのでその時外そうと思ったが、盗難防止のお守り的な力を信じてそのままにしていた。

「あっそうなんですね~!凄い!」

伝統ある学校なので同窓生が全国にいることは別に凄くないのだが、今日の晩ご飯など考えているところに何の前触れもなく現れることが凄いと思った。

「ええ、〇〇で教師をやっているんです。こちらで働いてらっしゃるんですか?」

「はい、この辺の大学に通ってまして」

盗んだバイクで走りだした訳じゃないぞ、という主張をその言葉にのせて、ようやく脳内を過っていた不安が去っていった。その後何回かやり取りをしたのち、どうもと言っておじさんもまた去っていった。

あそこから来たって、勉強頑張ったんですね、と言われたのが嬉しかった。忘れかけていた、頑張っていた頃の気持ちが蘇る。人にものを教える道を選んだおじさんもまた凄い。人生何があるかわからないなあ。